法科大学院は正当化されるか

法科大学院は要らないのではないか、という議論が話題になることが度々あります。

今回は、これについて考察してみたいと思います。

 

■なぜ予備試験が存在するか。

これは結論から言うと、司法試験自体のブランド価値を維持し、東大法の優秀層など上澄みの人たちを法曹と言う進路にできるだけ進んでもらうためです。

これに関しては以下のnoteの記事で詳しく説明しました。

note.com

もちろん、経済的に法科大学院に通えない人のため、と言う理由もちゃんとあるのですが、もし予備試験がなくなったら、と言うことを考えればこの目的は明らかでしょう。

予備試験合格者数の絞り方や、予備試験の論文問題の難易度、実際に予備試験合格者がどう評価されているか等も考えても、この目的は間違いないと思います。

 

就活無双できる優秀層が、かなりの時間と労力を注ぎ込んで、ブランド価値のない司法試験なんてよほどの変わり者以外受けませんからね。

 

 

法科大学院の功績

私は法科大学院は賛成・反対というより好きじゃないのですが、法科大学院の功績もあると思います。

 

 

▷司法浪人による社会的損失を削減

旧司法試験は、ある程度優秀でも司法浪人して複数回受験する人がかなり多かったようです。

しかし、そのような優秀な人たちをただ司法浪人させる=ニートにするのは本人のためにならないですし、社会的損失も激しいです。

なので、この人たちを法科大学院というところに収容して修士と言う学位を与える、と言うのはそれなりの合理性があると思います。

撤退した人にも、一応、修士と言う学位が残ります。

 

▷合格者数を増やして市場競争させて司法サービスの向上を図る

法科大学院制度により、合格者数が増やしました。

これは入口は緩くするが、できない人の淘汰は市場競争原理に任せる、と言う政策だと言えます。

 

確かに、司法試験の勉強がいくらできても、法曹の仕事ができるとは全く限らないわけで、これによって司法サービスの向上が図られるというのはそれなりに合理性があると思います。

 

▷有益な授業もある。

有益で面白い授業も一部あります。

ただ、優秀な学者でもゴミ以下の授業をする先生とか、無能なのにゴミ以下の授業をする先生も多いです。

法科大学院の問題点

▷受験生に大学教育という相容れないものを強制する点

法科大学院に問題点がたくさんあると思いますが、1番の問題点は、司法試験受験生に、資格受験と最も相容れない大学教育を強制させる点だと思います。

資格試験は大学教育と相容れないものです。受験生にとっては例外的な親切な教授を除き大学院で大学教授の話を聞くこと自体が大きくストレスになります。また、試験の邪魔になる大学進学に大金がかかる、かつ仕事ができないというものすごい経済的ストレスも発生します。

法科大学院制度で一番問われるべきはこの点なのではないかと思います。

 

これをいうと、「医者の国家試験受験者にも医学部進学を強制してるじゃないか」、という批判が聞こえてきそうです。

 

しかし、この批判は的外れだと思います。なぜなら、法科大学院に通わなくても業務に何の支障も来さないからです。

 

医者の場合は、医者の権威を支えているのは医学部を出たという事実です。仮に、医学部を出た人や医者の中で、「医学を出なくても医者になれる」と思っている人がいるかもしれませんが、大多数の一般人の中では医学部を出た事実が医師の正当性を担保しています。

また、実質的にも医学部は医者の業務にかなりの程度貢献していると思います。

 

他方、法科大学院を出たことは弁護士の正当性を何ら担保していません。むしろ、本当に優秀な人は法科大学院を出ていませんから、むしろ法科大学院に出ていない人に業務を頼みたいと思う人すらいるでしょう。

 

ですから、医師の国家試験受験者に医学部教育を強制するのは十分に正当化されますが、司法試験受験生に大学教育を強制するのは正当化されない可能性が高いです。

 

 

▷その他

法科大学院の問題点は以上の点に集約されていると思いますが、他には

 

法科大学院関係者が役に立ってないのにイキり散らして法曹関係者を不快にする

 

というのが結構大きいかなと思います。同業者にここまで嫌われる大学院とかありえないですらね。

 

・予備試験のブランド価値維持パワーが追いつかないぐらい、法科大学院が司法試験の価値を落としている

ということも挙げられると思います。

 

 

■まとめ

結局、法科大学院は行きたい人は行けばいいと思いますが、医学部と違い法科大学院教育を強制することを正当化する理由はないと思います。

法科大学院自体を無くさなくてもいいですが、法科大学院修了を受験資格にする必要はないと思います。

 

今後も受験者が減れば資格試験として成り立たなくなるので法科大学院は無くなりますが、それを防ぐために法曹コースとか在学中受験制度を作ったのでしょう。

 

ただ、そういう応急処置がどこまで通用するのでしょうね。

来年から一時的には増えるでしょうが、ただの応急処置で根本的な原因を治療できていないので、また3000人にまで減るでしょう。

そのときに法科大学院を受験資格にする制度をなくせるかどうかがポイントになるでしょう。