刑訴法220条1項2号と102条の関係

刑訴法220条1項2号で、被疑者の住居で被疑者を逮捕したときに無令状捜索・差押えをするとします。

 

このときにその場に居合わせた第三者の身体や所持品を捜索できるかという問題があります。

 

■有力説の考え方

222条1項が「被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索できる」という102条2項を準用しているため、この102条2項を根拠にその場に居合わせた第三者の身体や所持品を捜索・差押えできるという見解があり、一つの有力説です。

 

■(多分)通説の考え方(=その場に居合わせた第三者の身体・住居はそもそも「逮捕の現場」に当たらない)

しかし、おそらく最も有力な考え方は、このような場面で102条2項を適用して第三者の身体・所持品を捜索するという考え方をとっていません。

 

なぜなら、判例が採用する相当説では、逮捕の現場で捜索・差押えできるのは、「逮捕の現場」には、被疑事実に関連する証拠が存在する蓋然性が高いから「正当な理由」(憲法35条)に対する裁判官の司法審査を経るまでもないからです。

 

そうすると、そもそもこのような第三者の住居で被疑者を逮捕した場合に、「逮捕の現場」に当たるのは被逮捕者たる被疑者と第三者の住居だけです。つまり、第三者の身体・所持品はそもそも「逮捕の現場」に当たらないことになり、いくら個別・具体的な事情で102条2項のいう「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が認められても、「逮捕の現場」には当たらない以上102条2項によって捜索・差押えができないということなります。

 

つまり、102条2項が無令状捜索・差押えが準用されている意味は、第三者の住居が「逮捕の現場」に当たるときにも「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が個別具体の事情に照らして認められる必要があることを要求することだけにあります。

 

■それでも第三者の身体・住居を捜索できる場合はあるか

もっとも、逮捕の現場に居合わせた第三者の身体や所持品が全く捜索・差押えできないかというとそうでもなく、個別具体的な事情に照らして逮捕の現場にあったものを隠匿・所持している疑いがあるときは、無令状捜索・差押えの付随的処分(必要な処分)としての妨害排除措置としてできる場合があります。

 

そのとき、その第三者がバッグ等の所持品を持っている場合は元々逮捕の現場である第三者の住居に置いてあったものと考えられるので、特段の事情のない限り、所持品を捜索・差押えできることになります(ただし、被疑者の住居に居合わせた第三者の場合は、別の具体的事情が必要と考えられます)。