夫婦同姓と別異取扱い

夫婦同氏制に対する違憲訴訟に対する最高裁の判決・決定がH27.12.16とR3.6.23にありました。

 

このうち最高裁の考えが述べられているのはH27の方です。

 

(R3の方はH27年の判旨を追認する旨の判示がされており、実質的な判断を示していません。上告趣意書も最高裁判所民事判例集民集)に載っていないので見れませんでした。)

 

原告は、被侵害利益として憲法24条の婚姻の自由と憲法13条の氏名の人格権と憲法14条1項を設定しました。

 

 

このうち、今回は婚姻の自由と人格権についてはおいといて、本題である憲法14条1項について被侵害利益の設定方法を検討します。

 

◼︎誰と誰の間の別異取り扱いなのか?

 

平等権の憲法適合性審査は主に以下の2ステップで行います。

 

1 一つ目は、誰と誰の間で別異取扱いがあるのか

 

2 その別異取扱いに合理性があるのか

 

ここで、原告は、1で男と女の間で別異取り扱いがあるという主張を行いました。

 

しかし、この主張は、民法750条は男女を区別しておらず、実質的に女性側が姓を変更している場合が多いという実情があったとしても、それは事実上のものであり、法が区別しているわけではないとして、1の段階で切られてしまい2のステップに進みませんでした。

 

◼︎別の考え方

 

私は、最高裁がステップ1で短い理由で原告の14条1項の主張を一蹴してしまったように、原告のこの主張は難点があったと考えています。

 

 

平等原則で合理性が審査されるには、事実上ではなく、法自体が区別していることを認定する必要があります。

 

しかし、法自体が区別しているという構成をすることも実はこの訴訟では可能だったと考えています。

 

それは、男女ではなく、夫婦の姓を変える方と変えない方の間で別異取り扱いがあると言う主張です。これは明らかに法が一方だけ姓を変えるように強制しているので、2のステップに進むことができます。

 

そのように構成を変えるだけで、最高裁は、この夫婦間の区別に合理性があるかどうか審査しなければならなくなります。

 

◼︎13条の主張と実質的に被るか

最高裁は13条の主張で権利制約を認めなかったので、合理性の審査に進めば13条のほかに14条1項で以上の主張をすることに大いな意義があったでしょう。

 

 

つい最近の性別適合手術要件の違憲決定が出ましたが、その論理を夫婦同氏訴訟に転用すると13条違反か24条1項違反が導かれる可能性が高くなったので、14条1項で構成する必要は必ずしもないかもしれません。