Twitterに書けない呟き:結果無価値と行為無価値

◾️違法性とは

違法性とは何か

 

違法性とは法に反することである。

 

これはトートロジーに思えるかもしれない。

 

しかしこれを確認しておくのは大事なことだ。違法性とは法に反すること。これを出発点にして以下見ていこう。

◾️結果無価値・行為無価値とは

では、法に反することとは?

つまり、どうすれば法に反することができるか。

 

これに対する回答として、結果無価値論と行為無価値論がある。

 

結果無価値論は、刑法は法益を保護するためにあるから、法に反することとは、法益を侵害することである、と考える。

つまり、法益侵害という結果こそが反価値(違法性の内実)ということだ。

 

行為無価値論は、行為規範に反することだと言う。

 

行為が反価値(違法の内実)だということだ。

 

現在の日本での行為無価値論は、行為無価値論は法益保護の点も重要だと考える。

 

したがって、いまの日本でいう行為無価値論とは、一元的な行為無価値論ではなく、結果無価値に合わせて行為無価値も考えるべきだ、という二元的行為無価値論のことを指す。

 

ここで、大事なことは、この二元的行為無価値も結果無価値を中心に、これに行為無価値論も合わせて違法性を考える、という考え方であることだ。

 

だから、結果無価値論と行為無価値論の対立とは、結果無価値に行為無価値も併せて考えるべきか、結果無価値だけで行くべきかということだ。

 

◾️コメント

行為無価値論には、道徳的価値の刑法による保護を企図するリーガルモラリズム的な行為無価値と、道徳と刑法を完全に峻別する行為無価値論がある。

 

前者は伝統的な行為無価値論だが、現在では必ずしも有力な考え方とは言えない。

 

後者の行為無価値論の方が立ちやすいだろう。

 

行為無価値論は、結果無価値論に対して、違法性が法益侵害だとすると、人でなくても、例えば自然災害などでも法益侵害が可能だ、そうすると、何らかの人による意思的行為(故意でも過失でも)がないと違法ということにならないのではないか、意思的行為が発動要件になっていないと、法の刑罰予告機能がないのではないか、と批判する。

 

なるほど、確かに、人の意思的行為による法益侵害でないのに「違法である」という評価が加えられるのはおかしい。これは私も的を射た批判なように思う。

 

しかし、私は、結果無価値論の方がいいと思っているし、実は受験的にも結果無価値論で考えた方がわかりやすいと思っている。

 

また、結果無価値と行為無価値の対立は、現在の議論水準では個別の事例の結論に差異を及ぼすか疑問があり、実務がどちらかとは必ずしも言えないのではないかと思う。

 

結果無価値で考えた方がいいと思うのは違法性・責任の理解が楽になるからだ。

 

違法性とは法益侵害行為をいう。責任とは非難に値することをいう。

 

違法性=法益侵害、責任=非難可能性

 

非常に単純だ。

 

主観的違法要素、主観的責任要素の区別も楽だ。

 

犯罪論体系の理解もスムーズだ。

 

とりあえず行為無価値ではなくとりあえず結果無価値論でもさしたる問題はない。司法試験委員も結果無価値論者は多い。

 

むしろ犯罪論体系に対する理解が甘い人が多く、最近では違法性阻却事由、責任阻却自由の理解を問う問題が頻出している。

 

私が指導するならとりあえず行為無価値論を教えるという安易な発想にはならない。

 

受験生が結果無価値論にアレルギーを持つことは残念だ。

 

効果的で過度でない「この論争を終わらせに来た」

「効果的で過度でない」という審査基準は良いのか良くないのか。話題になっています。

 

これについて検証していきます。

 

⬛︎違憲審査基準論とは

憲法では、違憲審査基準論という違憲審査の手法が(実務上も→少なくとも弁護士が書面書く際は)学説上も承認されています。

 

これは芦部信喜アメリカの判例で発達した法理を輸入して、日本でも支持を得てきたものです。

 

これは3つの審査基準を使い分けようというものです。

 

厳格審査は①目的がやむに止まれぬ利益、②手段が必要不可欠なもの(アメリカではnarroly tailored これは字義通りぴったりにしたてられたという意味です)

 

中間審査は①目的が重要で、②手段が目的と実質的関連性を有するもの

 

緩やかな審査基準は、合理性審査とも呼ばれますが、①目的が正当で、②手段が目的との関係で合理性を有するもの

 

というものです。

 

⬛︎効果的で過度でない基準とは

 

効果的で過度でないとは、このうち、中間審査基準の②手段審査が実質的関連性を有するものではなく、②手段が効果的で過度でない、という基準を立てているものです。

 

おそらく、どこかの受験指導者が作り出して教えて広まったものだと言えます。

 

 

⬛︎「効果的で過度でない」はダメなのか

この基準を使うことに賛成する受験生や合格者たちもいます。

 

「効果的で過度でない」という基準を使って予備試験でAが来たという報告もあります。

 

この賛成側の意見としては、「当てはめが充実すればいいから」「司法試験は当てはめの試験だから」という考え方に基づいている傾向があります。

 

しかし、はっきり言って、この基準は使わないほうがいいです。

 

 

理由の一つとして、この基準は

 

法学・学問の否定の上に成り立っているからです

 

まず、効果的で過度でないという基準は学問の世界で登場していません。

 

どこかの受験指導者のオリジナルです。

 

 

今度詳しく解説しますが、法学とは約束事を形成するためのツールです。

 

この約束事というのは言語を使ってなされます。

 

当てはめの表現なら日常的な言語を使っていても何も言われませんが、特に法規範を表す表現については勝手な単語で表すことはできません

 

その約束事である言語を勝手に作り出すことは、約束事を勝手に作っていることと同じです(まだ法曹になっていない身分の人が行えばなおさら)。

約束事を勝手に作っているということは、約束を破っていることと同義です。

 

どの学問もそうだと思いますが、法学というのは、学説や判例という一種の表現市場がありその表現市場から、使える理論が実務に輸入されてくるわけです。

 

そうすると、実務からさらにフィードバックが帰ってきて、さらに学問が発達していきます。

 

法学というのはそのようなサイクルの上に成り立っているわけです。

 

そこに全く表れていない理論を勝手に使うということは、そのようなサイクルを否定することと≒ないし=ということになります。

(ただし、当該法的論点について議論が進んでいないハードケースに当たったときであれば、法規範を自分で発見・創造するという場合はあり得ます。)

 

つまり、これは法学を否定することになります。

 

また、そのような表現市場の否定であり、これは学問を否定していると言えます。

 

学問という表現市場自体を否定してないとそのような基準は使えません。

 

⬛︎中身が同じでもダメなのか

 

このようにいうと、「でも実質的関連性と効果的で過度ではないという基準は意味は同じなんだから別にいいじゃないか」、という反論もあり得るでしょう。

 

しかし、これが全然よくないわけです。

 

規範は言語で表される、という話をさっきしましたが、これは逆にいうと、法規範は言語でしか認識できないということです。

 

つまり、Aという言語で表されるA'という意味(約束事)はAでしか表されないということです。

 

Bという言語ではA'は表せません。あくまでBの意味はB'です。

 

B'という意味がA'にどんなに似てたとしても、それはB'にすぎず、A'という意味は決して表すことができないのです。

 

これは法学が約束事であるということに起因します。

 

約束事というのはそれを守る人が共有していなければなりません。

 

しかし、A'という約束事をAやBという違う言語で表す人がいたら、AとBが違う言語であり違うA'、B'という意味である以上、肝心なときに約束を共有できないことになりかねません

 

 

法学はそういうことがなるべく起きないように、約束事を万人に同じように認識できるように、言語を使って広く公示しているわけです。

 

 

つまり、結局中身が同じでも、言葉が違えばダメだということになります。

 

⬛︎おわりに

 

結局、効果的で過度でないというのは試験的にもできれば使わないほうがいいです。

 

まずこのような文言は、ほぼ間違いなく裁判所に提出できません。裁判官も困ってしまいます。

 

試験で使っても、これは法学で使われていない以上、試験委員も自分を否定されているように感じるかもしれません。

 

答案も一種のコミュニケーションですから、用語法を共通のものに合わせるというのはとても大切なことなのです。

 

試験に受かればいい。

 

それもひとつの考え方ですが、共通の言語を使うというのは法律家としても最低限のお作法ですし、社会でも要求される技術・マナーなのです。

 

 

 

 

 

 

目的効果基準の死亡確認

目的効果基準孔子廟判決で死んだかという議論があります。

結論的には死んだとは言えませんし、あなたが受験生なら使えるように用意しておくと役に立ちます。

 

(私自身は基準で決着がつくようなものではないと思っているのでどっちでもいいのですが、受験生が勘違いしないように書いておきます)

少なくとも、「受験生は目的効果基準を使うべきでない」というのは誤りかと思います。使ってもいいし使わなくてもいいのです

 

▪️空知太神社事件判決が目的効果基準を使わなかった理由

まず、空知太判決が違憲となった理由はなんだと思いますか?

 

空知太判決で違憲となった行為は、神社を管理する氏子集団への土地の無償の提供行為です。

 

この違憲判断は、①何らの対価を得ることなく市の土地の上に神社を設置させていることが、氏子集団の宗教的活動を容易にさせているという理由です。

 

しかし、最高裁は、違憲という結論を出したものの、土地から神社を撤去させて明渡しさせるとすると、氏子集団の信教の自由に対する重大な不利益を与えることを危惧します。

 

最高裁は、そのような不利益を避けるために、土地を有償または無償で譲与して市有地上に神社が設置されている状態を解消する、もしくは、適正な価格で貸し付け①の状態を解消することでも違憲状態を解消できると言って、そのような方法を模索する審理をさせるために差し戻します。

 

しかし、この事案で仮に目的効果基準を使うとこれらの解消措置すらも宗教的目的かつ宗教活動の促進につながるので、違憲になってしまいます。

 

このように、空知太神社事件の事案では目的効果基準では使えません。

 

冨平神社事件は、すでに無償で譲与していて②を解消している事案ですから、合憲の結論が出ました。

 

▪️孔子廟事件判決も同じ事案類型

実はこの孔子廟事件もこの事案類型に属するといえます。

 

孔子廟判決は無償で貸していた事案ですから、潜在的には上記①②が問題となっています

 

(なぜなら、孔子廟判決は、(違憲状態解消のために)賃料を請求すべき、という結論を出していますが、潜在的には賃料を請求すればそれで済むのか撤去すべきではないか)ということが問題になるような事案なので、目的効果基準を使うとこの結論自体が、上記空知太事件で述べたのと同じように宗教目的を有し、宗教の促進につながるので違憲になってしまうおそれがあります)

 

したがって、この事案は空知太事件判決や冨平神社事件判決と同じ事案類型に属するということになります。

 

ですから、結局孔子廟判決が目的効果基準はそもそも使わなかったのではなく、使えなかったということができます。

 

ここまで整理すると

 

土地の提供には4種類あり→①無償で貸す、②有償で貸す、③無償で譲与、④有償で譲与

 

このうちどれが違憲でどれが適切かを考える事案では、空知太事件の総合考慮基準が使われるといえます(この考えをより進めたものとして、長谷部先生などの政教分離と信教の自由が衝突する場面ではこの総合考慮基準が使われるという考え方があります)。

 

 

今後の予想としては、最高裁は、愛媛玉串事件や白山比咩神社事件などの事案類型ではまた目的効果基準を使用するのではないかと予想されます。

 

以上、判例百選の空知太事件の長谷部解説や長谷部・憲法講話などが参考になります。

 

▪️超重要:答案作成の観点

私は以上のように考えますが、そもそも、今後目的効果基準は使われないという判例解釈自体が間違ってるとは思っていません。それも一つの有力な考え方です。調査官解説もそのような趣旨のことを述べているでしょう。

 

 

しかし、目的効果基準を試験で使うべきでないと情報発信している合格者を見かけますが、これはナンセンスでしょう。判例解釈としてはどちらも成り立ちます。どちらも間違っていません。ですから、どっちを使ってもいいのです。

 

今どっちを使ってもいいと言いましたが、はっきり言って、空知太事件の総合考慮基準一本で行くことはオススメしません目的効果基準も使えるようにしましょう

 

なぜなら、愛媛玉串や白山ひめのような事案類型に当たったときに、論文試験にせよ実務で裁判所に書面を出すにせよ、総合考慮基準の方が書きやすいと思っているのでしょうか

 

このような事案類型が出たとき、代表的な先例が目的効果基準を使って目的と効果に当てはめている以上、起案する人もそれに乗っからないと説得的な議論はしにくいはずです。

 

総合考慮基準の中で目的効果に当てはめればいいとお考えかもしれませんが、総合考慮基準の考慮要素には目的効果は例示列挙されていませんから、総合考慮基準を立てて目的効果に当てはめるにしても、例示列挙されている要素に当てはめず、例示列挙にされていない目的及び効果という要素に当てはめるという論証をするつもりでしょうか。

 

ですから、目的効果基準を使った方が先例を考慮した説得的な議論をしやすい場合があるので、その時に使えるようにした方がいいという話です。

 

そもそも、目的効果基準が使われた事案と総合考慮基準が使われた判決を比べればわかりますが、最高裁は信教の自由の確保という制度の根本目的から相当と言えるか、という判断枠組みを事案に即した形で具体化したものとして、目的と効果を審査する目的効果基準というものを使っていますし、空知太事件では上記で述べたようにそれが事案に即さないからチェックリスト方式の総合考慮基準を使っているのです。

 

*ただ、目的効果基準が使われた判例の中身を追っていくと、中身が目的および効果を考慮要素とした総合考慮型の審査に近づいているとも捉えられるので、「目的及び効果を考慮して、制度の根本目的との関係で相当と言えるか」という趣旨の判断枠組みを使って起案することは現実的に考えられます。
この場合の基準の実態は、かかわり合いの相当性を実質的に審査することからレーモン・テストにかなり近づくと思われます。

 

ですから、目的と効果を主に審査すべき事案では総合考慮基準ではなく目的効果基準を使うということは予想されます。実務でもそのように主張していくのではないかと予想します。

 

ではなぜ目的効果基準が破棄されたという議論がこんなに盛り上がってるかというと、そもそも目的効果基準の評判が良くないので破棄されるべきだ、という考え方が背景にあると思います。

 

答案作成の際は、どちらを使うべきかについて詳しく論じる必要はないと思います。

一言触れてもいいし、しれっとどっちかで書いても大差はないと思います。

 

▪️神戸高専事件の類型ではどうか

同じように政教分離と信教の自由の衝突が問題となった神戸高専事件では、剣道受講の代替措置について目的効果基準を使っています

土地の提供ではないこのような事案類型でも今後も目的効果基準を使うのででしょうか。

 

これについては分からないということになります。

 

ただ、目的効果基準をすでに同判決で使って合憲判断を出していますから、そのまま使うことも十分あり得ます。

 

 

(余談ですが、とある答練で目的効果基準か総合考慮基準かを争わせる問題が出たという投稿を見た気がするが、試験問題としては論外でしょう

基準が決着を左右するような性質のものではないので、実際の訴訟でどちらの基準を使うべきかがメインの争点になることはないと思います

試験問題としては、当てはめの精度を見るべきです)

刑訴法220条1項2号と102条の関係

刑訴法220条1項2号で、被疑者の住居で被疑者を逮捕したときに無令状捜索・差押えをするとします。

 

このときにその場に居合わせた第三者の身体や所持品を捜索できるかという問題があります。

 

■有力説の考え方

222条1項が「被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索できる」という102条2項を準用しているため、この102条2項を根拠にその場に居合わせた第三者の身体や所持品を捜索・差押えできるという見解があり、一つの有力説です。

 

■(多分)通説の考え方(=その場に居合わせた第三者の身体・住居はそもそも「逮捕の現場」に当たらない)

しかし、おそらく最も有力な考え方は、このような場面で102条2項を適用して第三者の身体・所持品を捜索するという考え方をとっていません。

 

なぜなら、判例が採用する相当説では、逮捕の現場で捜索・差押えできるのは、「逮捕の現場」には、被疑事実に関連する証拠が存在する蓋然性が高いから「正当な理由」(憲法35条)に対する裁判官の司法審査を経るまでもないからです。

 

そうすると、そもそもこのような第三者の住居で被疑者を逮捕した場合に、「逮捕の現場」に当たるのは被逮捕者たる被疑者と第三者の住居だけです。つまり、第三者の身体・所持品はそもそも「逮捕の現場」に当たらないことになり、いくら個別・具体的な事情で102条2項のいう「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が認められても、「逮捕の現場」には当たらない以上102条2項によって捜索・差押えができないということなります。

 

つまり、102条2項が無令状捜索・差押えが準用されている意味は、第三者の住居が「逮捕の現場」に当たるときにも「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が個別具体の事情に照らして認められる必要があることを要求することだけにあります。

 

■それでも第三者の身体・住居を捜索できる場合はあるか

もっとも、逮捕の現場に居合わせた第三者の身体や所持品が全く捜索・差押えできないかというとそうでもなく、個別具体的な事情に照らして逮捕の現場にあったものを隠匿・所持している疑いがあるときは、無令状捜索・差押えの付随的処分(必要な処分)としての妨害排除措置としてできる場合があります。

 

そのとき、その第三者がバッグ等の所持品を持っている場合は元々逮捕の現場である第三者の住居に置いてあったものと考えられるので、特段の事情のない限り、所持品を捜索・差押えできることになります(ただし、被疑者の住居に居合わせた第三者の場合は、別の具体的事情が必要と考えられます)。

 

 

簡易罪数処理

罪数処理マニュアルを簡単に書いてみます(以下、常体で失礼します)。

 

思考の順番としては、1基本併合罪になることを押さえておき、2吸収・包括一罪になるか、3観念的競合・牽連犯になるか、という順番になる。ただ、2と3は同時並行的に行うことも多い。

 

 

1 併合罪

 

基本的には、複数の犯罪は併合罪になる。まず、これを押さえておく。

 

2 吸収関係、包括一罪、混合的包括一罪

(1)吸収とは、別の犯罪を成立させるまでもなく、その犯罪で法益侵害が包括評価されている場合に認められる。例えば、偽造通貨行使罪は詐欺罪を通常伴うことが想定されており詐欺罪独自の法益侵害が無いので、別途詐欺罪は(構成要件を満たしていたとしても)成立せず偽造通貨行使罪に吸収される。

このとき、法益侵害がちゃんと包括評価されているかに注意する必要がある。例えば、殺意を持って現住建造物に放火して死亡させた場合、現住建造物放火罪と別途に殺人罪が成立し、これは観念的競合となる。現住建造物放火罪それ自体は死刑を上限とする重い刑であるが、同罪はあくまで建造物それ自体と公共危険を保護法益とする犯罪であり、故意行為による生命侵害については殺人罪の守備範囲になるということである。

(いわゆる法条競合もここに含まれる)

 

(2)包括一罪は、一見、自然観察的に見れば別の複数の犯罪が成立するように見えるが、実質的に見れば一個の犯罪行為として評価していいような場合をいう。これを明示的に定めた根拠条文は存在しないが一般に認められている。

よく例として挙げられるのは、被害者宅から物を盗むのに何回かに分けて運び出した場合である。この場合、自然観察的に見れば、窃取行為が複数あり窃盗罪が複数成立しているように見えるが、実質的に見れば複数の窃盗罪を成立させて併合罪にするのは妥当でない。

包括一罪は、意思・行為の同一性や法益の共通性などから判断されると言われる。

 

(3)混合的包括一罪とは、異なる罪名にまたがるけど、行為の共通性や侵害法益の共通性から併合罪ではなく包括一罪として評価する場合をいう。罪名が複数あるから「混合的」と付けられている。

これは財産犯で認められることが多い。

例えば、一つの財物奪取に向けられて欺罔行為による財物交付移転が失敗して、別途強盗罪で財物奪取を完遂した場合、その財物という同一の法益侵害(危険)しかないから併合罪で評価する必要まではない。そこで、詐欺未遂罪と強盗罪の混合的包括一罪となる。

(ただし、意思の共通性として、詐欺罪を失敗した場合は強盗に切り替えるという当初からの計画の存在が前提になると思われる)

 

 

3 牽連犯、観念的競合

 

次に手段・結果の関係にあれば牽連犯、同一の行為に複数の犯罪が成立するなら観念的競合になる。この場合重い方の罪の刑が課される。

牽連犯で注意すべきは、牽連犯になるかどうかは判例上認められているかどうかで決まるということである。

例えば脅迫を手段として監禁しても、当該事件では手段・結果として認められても、判例上認められていないから牽連犯とはならない。

判例はその犯罪が類型的・定型的に手段・結果の関係になるかどうかを重視している。

 

観念的競合は、自然観察的にみて一つである行為に二つ以上の犯罪が成立している場合をいう。2つ以上の犯罪が1つの行為に観念的に見れば競合しているから、観念的競合と名付けられている。

例えば、上で挙げた例で見れば殺意を持って住居を放火して人を殺害した場合は、現住建造物放火罪と殺人罪の観念的競合になる。放火という1つの行為に現住建造物放火罪と殺人罪が競合しているからである。

 

ちなみに、法条競合の場合は観念的競合とは異なり犯罪は1つしか成立していないので、競合しているのは法条だけである。

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課題・やるべきこと(自分用メモ)

■答案作成全般

・単に筆力を上げて2時間でたくさん文字を書けるようになる。

・当てはめを充実させる、当てはめの定型性を掴む

・規範とにかく覚える

 

■内容面(論文)

憲法

・問題となっている具体的な権利の性質を論じて答案の各部に落とし込む

違憲審査基準の当てはめの型を掴む(手段適合性判断と手段必要性判断は一体的に論じても可、手段相当性も合理性基準以外では論ずる。手段相当性と手段必要性が融合することもあり得る)

・財産権の既得権保障と法制度保障テーゼの事案類型を抑えるのと適用条文をいまいちわかってないので確認する。損失補償も押さえる。

・事後的・段階的規制(広島市暴走族条例)の具体的内容を把握する

表現の自由の際、自己統治の価値との関連性を考慮するか否かの態度決定をしておく

・居住移転の自由(移動の自由)も押さえる

・行政手続に及ぶ適正手続を押さえる

 

行政法

・裁量認定がまだできていないから押さえる。

・裁量審査の当てはめも全然できていないからちゃんとやる

原告適格の答案の型が未達だから固める

・国賠の判例も押さえておく

・処分性の判例は瞬時に区別できるように

・訴えの利益も書けるようにする。

 

民法

・不当利得、不法行為、親族法あたりが弱い

・契約各論の判例をしっかり押さえられていない

・条文素読する

・連帯絡みが全然できていない・

・非典型担保の性質決定をどう答案に反映させるかわかっていない

 

会社法

・法人格否認の法理は放っておくと怖いから書けるように

・開業準備行為と設立費用と財産引受けをちゃんと区別できるように

・機関はある程度論点抽出できるから、規範を瞬時に書けるようにする

・資金調達はかなり弱いから重点的に

・買収絡みは事案類型押さえて、規範選択間違えないように。当てはめもしっかりできるようにする

 

民事訴訟

権利能力なき社団や組合の当事者能力をちゃんと書けるようにするのと、授権の要否を押さえる

・死者名義訴訟・氏名冒用訴訟の処理をできるようにする。判決効・再審との関連も押さえる

・既判力の論じ方を決めておく

・法的観点指摘義務の論じ方を押さえておく

・任意的当事者変更、主観的追加的併合、訴えの追加的交換的変更、訴えの取下げあたりをセットで押さえる

・固有必要的共同訴訟をどう当てはめるか(特に遺産確認の訴え)

・独立当事者参加をまだわかっていない

・共同訴訟的補助参加をわかっていない

・補助参加の利益を証明効で認めるか態度決定しておく

・紛争の主体たる地位の当てはめをできるようにする

・口頭弁論終結後の承継人には同一・先決・矛盾は関係ないのか?

・控訴絡みを全然分かっていないのでちゃんと書けるようにする

 

▷刑法

・とにかく定義をちゃんと正確に書けるようにしておく

・過失犯の論じ方を練習しておく

・過失の共同正犯をどう論ずるか決めておく

・誤想防衛絡みを分かっていないので処理できるようにしておく

・電磁的記録系もちゃんとやっておく

 

▷刑訴

・条文捜査に不安がある

・令状主義の趣旨から規範を書けるようにできていない

・現行犯逮捕と準現行犯逮捕の時間的限界を再度確認

・公判前整理手続の判例を押さえておく

・訴因の論点の規範の正確性を高める

・伝聞の推認過程を描写できるようにする。

・伝聞例外の判例も落とさないように

一事不再理も書けるようにする

 

■短答

憲法

・統治の判例を押さえておく

・統治の条文をちゃんと読んでおく

地方自治、公の支配当たりが特に弱い

 

民法

・後見が弱い

・催告後の期間経過が追認拒絶になるか追認擬制になるか押さえる

法定地上権の処理

担保物権の条文素読

・共同抵当の物上保証人が出てきたときの処理

・非典型担保の判例を押さえる

・賃貸借・請負は判例を押さえる、他の契約は条文素読

 

・嫡出否認と親子関係不存在の違いわかっていない

・養子縁組は特に条文素読

・遺言、遺留分、配偶者居住権は条文素読

 

▷刑法

・刑罰は条文読んでおく(特に加重減刑系)

・必要的減免が任意か確認

・幇助・教唆の条文・判例を押さえる

・凶器準備集合等罪の判例を押さえる

・略取誘拐は条文素読する

・逃亡罪・犯人隠避・証拠偽造は条文素読判例

(損壊、暴行脅迫、通謀の意義。教唆犯の成否)

業務妨害公務執行妨害判例押さえる

・放火罪の条文素読

・賄賂罪の条文判例。賄賂罪の犯罪類型をよく確認しておく

 

 

職業の自由の違憲審査方法(簡単なメモ)

自分の整理のための簡単なメモです。

 

 

■保護範囲・制約論証

 

狭義の職業選択の自由ならそのまま保障される。

職業遂行の自由(営業の自由)なら薬事法の論証を書く。

「職業は社会的機能分担、個性の全うの場として人格的価値と不可分であり職業遂行の自由も保障される」

 

社会的相互関連性は保障根拠ではなく制約根拠なので保護範囲論証では書かないが吉(R2採点実感参照)。

 

違憲審査基準定立論証

・職業の自由の性質を論ずる

上で述べた人格的価値と不可分をもう一回使う。

 

・段階理論

許可制か、それよりさらに強いか弱いか。

 

・狭義の職業選択の自由か活動内容の自由化の制約かどうか

開業そのものを断念されるかなど。

 

・客観的要件か主観的要件か

距離制限は客観的要件。距離制限自体の性質も見る(開業そのものを断念させるなど)。

主観的要件なら緩やかに作用する(司法書士事件)

その他、資格制度も政策的な立法裁量があるので緩やかに作用する。

 

・積極目的か消極目的か、それ以外か

目的二分論は死んでいない。消極目的なら厳格に作用するし、積極目的なら原則として合理性の基準になる。

 

・風俗案内所

どの職業かも一応気にする。風俗案内所なら流石に厳格に審査はされないが、薬局とかなら厳格に審査されるのでこれも審査基準と多少は関係がある。

 

・厳格度の相場観

中間審査か緩やかな審査か。厳格審査はほぼないと思う。

中間審査ならオブライエンテスト(≒実質的関連性の基準)かLRAの基準。オブライエンテストの方が当てはめやすいと思う。