承継的共犯と因果性

承継的共同正犯とは、実行行為後に共謀に加担したとき場合に、その加担者の共犯関係をどう処理するかという問題のことを言います。

 

受験生が1番使う基準が積極利用の基準というもので、内容としては、後行加担者が先行者の行為・結果を自己の犯罪として積極的に利用した場合は認める、というものです。

 

ところが、この積極利用の基準を使う際に、…積極的に利用した場合は因果性を遡り、先行者の行為の責任を負わせる、という規範定立をする人がいます。

 

こういうことを書くのは、はっきり言って、やめてください。

 

これは、因果的共犯論を全面的に維持しつつ、承継的共同正犯の成立を認めようとすることから無理が起こっています。

 

まず、先行者の行為の責任を遡って後行者に負わせるというのは不可能です。それは因果的共犯論以前の刑法の大前提の責任主義とか個人主義に反します。

 

先行者の行為を後行者が負わせるのと、先行者の行為は先行者のものとしつつ、後行者にその全体的に行われた犯罪の罪責を負わせるのは別です。

簡単にいうと、承継的共同正犯は行為レベルで議論する人と、罪名レベルで議論する人がいます。しかし、承継的共同正犯は基本的には、成立罪名をいかに考えるかという問題なので、罪名レベルの議論に従ってください。

 

わかりやすいように例を出しましょう。

甲が、暴行脅迫後に共謀に加担して、財物奪取に関与したとしましょう。

 

このとき、暴行脅迫(という行為)の責任を負うか、という問いの立て方は避けるべきです。

暴行脅迫後に加担して(その行為責任自体は負わないのに)、強盗罪の共同正犯の成立を認めてよいか、という問いの立て方をすべきです。

 

何回も言うように、積極的に利用したからといって、その行為の行為責任まで負うわけではないからです。